食文化に関する一考察 ~和食への再認識~

が最も好きな文化の一つに和食がある.和食は2013年に,地中海の健康食やフランスの美術食などがそのリストに名を連ねるUNESCO無形文化遺産に登録された.

 

しかし近年,外食産業に於けるハンバーガーや牛丼といったファストフードチェーン店の台頭とともにその文化や歴史への認識は日本人の頭の中から薄れつつある.今回はその「和食」とい愛すべき文化への再認識を目的として記事を執筆したい.

 

 

 

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(画像は京都岩倉逸京より引用)

www.kyoto-ikkei.com

 

 

 

には現在に至るまでの1年以上,滋賀県のとある和食料理店の厨房でのバイト経験がある.その店の料理長である人物は40年以上京都,神戸,東京の料亭で腕を揮ってきた生粋の和食料理人で,京料理の中でも有名な「鰊蕎麦」の調理法を確立することで自分のビルを建て自家用車はベンツCL6000後期型であるというイカしたおっさんなのだが,この料理長が和食の調理に関するノウハウや歴史についていろいろ教授してくれた.

 

その一つに面白い話がある.讃岐うどんを思い浮かべてほしい.どっしりと太くしっかりとしたコシがあるにも関わらずやわらかく滑らかな舌触りの麺をイメージしていただけると思う.これに対し,京うどんと呼ばれるうどんの麺は細い.なぜか.本来京料理とは,懐石料理を含み,全国各地から上京してくる大名や武将に提供される料理を中心とした,客人をもてなす料理であることがほとんどであった.京都独特の文化の一つとして舞妓がその食事の席を共にすることがある.京うどんの麺が細いのは,舞妓の化粧を気遣ってのことだと言われている.このように国の文化がその食事にも影響を顕著に及ぼしている様も和食ならではの醍醐味であるといえる.

 

 

 

Wikipediaによると,和食は

 

日本料理(にほんりょうり、にっぽんりょうり)は、風土社会で発達した料理をいう洋食に対して和食とも呼ぶ。食品本来の味を利用し、などの季節感を大切にする特徴がある。 日本料理 - Wikipedia

 

のように述べられているが,僕の中でのイメージと比較してもまさにおっしゃる通りだと思う.詳しく見ていこう.和食には大きく3つの特徴があると考える.

 

 

1.食材の多様性と旬

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日本は南北に長い島国である.その為,海や山といった地理的環境が充実している他,気候区分の観点からみても日本列島は寒帯,亜寒帯,温帯,熱帯といったような幅広い分布を有しておりこれらの環境が多様な食材の恩恵を受けることを可能とした.またそれぞれの食材に旬があり,和食はその旬となる食材の四季折々の移り変わりを楽しめることも大きな特徴である.

 

 

2.前提として健康食であるということ

 

日本の食事でよく言われる一汁三菜はそもそも画期的な食事体系である.正しい一汁三菜を意識していれば,自動的に栄養バランスがとれるようになっている.具体的な一汁三菜については専門の記事を参考にしてほしい.

macaro-ni.jp

 

実は和食が健康食であると言われる所以はこれだけではない.和食は素材の味のほかに,だしを巧みに用いることで料理としての完成度を飛躍的に高めている.だしは鰹節や昆布,シイタケがよく知られているが,これ以外にも多種多様なだしが存在しており,それらは科(化)学的に分類までされている.だしの持つうまみ成分の効果によって,和食では食材に過度な味付けをする必要がない.これが塩分や油分の摂取過多を防いでくれるということも和食が健康食であると言われる所以なのである.

 

 

3.伝統的な行事との関わり

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旬とも関係する話だが,和食は他の食文化の中でも顕著に,暦上の伝統行事と密接に関わっているという特徴がある.代表的なものとして挙げられるのがおせち料理だ.おせち料理は1月1日に賀正の料理として食べられることが知られているが,その目的に合わせてゲン担ぎの意味を持った食材を用いた料理で重箱がいっぱいに彩られている.このように和食は古くから日本の習わしと共に人々に親しまれてきた食文化であるということがわかる.このような特徴を持つ食文化は世界を探してもそう多くはない.

 

 

 

 

 上が僕の認識している和食の主な特徴であるといえる.このような特徴を抑えるだけで和食とは非常に奥が深く,日本人が愛すべき食文化であるということがわかっていただけたと思う.これから先,懐石料理などの料理を食べる機会があれば,こういった和食ならではの楽しみ方を頭の片隅において味わってほしい.この記事を通して薄れゆく和食への認識を改めて確認できた人が一人でもいれば幸いである.今回軽くしか触れなかっただしについては,またうまみの話とともに詳しく考察していきたい.