47都道府県"まほろば"探訪記

明日香村某所(撮影:ワイ)

はじめに:"まほろ"とは

「素晴らしい場所」「住みやすい場所」という意味の日本の古語(Wikipediaより)で,古事記内で景行天皇がかつて現在の奈良県に位置していた大和国を「真秀ろば」と表現したとされていることが始まりと言われる.

詮ずるところ,日本人にとって奈良県が「素晴らしい場所」であることは自明である(ほんまに.明日香村とかいってみて.まじで)が,僕は思った.「この広い日本,素晴らしい場所と表現できる地は他にもあるんとちゃうか.だって景行天皇そもそも関西から出たことなくね???(知らんけど)」

かくして僕は大学院在学中,全国47都道府県いったことのない街を巡って回ることを決断.当然,通りかかったり一箇所で遊んだってだけじゃその地域のことはわからないと思うので地域内での宿泊が大前提.ちょうどコロナ禍の2年間だったこともあるので下記のような原則を設けて出発したのである...!

  • その土地のものを食べる
  • 県庁所在地に踏み入れる!
  • ネカフェなどは利用せずに,その土地の宿泊施設で泊まる
  • 緊急事態宣言下の都道府県の県境を跨がない.
  • 基本的に2人以下での移動とし,繁華街には不用意に立ち入らない.
  • 将来その土地出身の人とその土地のお話ができるように意識して街を見学する!

 

2022年3月,最後のフロンティア沖縄県に到達し,47都道府県"宿泊"制覇を達成.この後,いろんな方に「どこが一番良かった」かということを尋ねられるんだけども,これって難問中の難問.「どこのラーメン屋が一番好きか」という質問の10倍くらい答えるのが難しい.けど語りたいことはたくさん...

というわけで本記事では思いついた観点別で地方都市・スポットのメモを残しておきたいと思いました!異論は認めます,写真はすべて僕の撮影,コメントは走り書き,順番は北から!

 

47都道府県 "まほろば"メモ

【観光地としてよく設計されてると思った"まち"】

群馬県草津町 草津温泉 湯畑

観光客がその街に何を期待しているかを見越して,その体験のための導線設計を織り込んだ街づくり.すぐに真似できることではないけど,めちゃめちゃ勉強になりました.福井なら「恐竜」,群馬なら「温泉」というコンテンツ,中でも熱海の「温泉」「海」「立地」をフル活用したここ数年での巻き返しには目を見張ります.

 

【旅先で自治体の取組みが積極的と感じた"まち"】

岡山県西粟倉村 町役場

長岡,北九州のスタートアップ支援やベンチャー誘致への貢献は,手厚くスピーディで非常に自治体さんのやる気を感じられた気がします.西粟倉村は生駒市と同様「SDGs未来都市」に選定されている自治体で,「村民票」アプリの導入などなど小さなまちながらその取組には注目です.

 

【住み心地よさそうな"まち"】

神奈川県横浜市 赤レンガ倉庫

ちょっと強めのバイアスかかってるので皆さんにもご意見を伺いたいところ.高速道路があって,コンパクトになんでもまとまってる"まち"が住みやすいのかなと思います.

 

【老後に住んでみたい田舎"まち"】

奈良県吉野町 くにす食堂より

ここで暮らす老後を想像したことある田舎3選.秩父は何度も人気アニメ作品の舞台になっており「アニメ町おこし」の草分け的存在で活気あり素敵です.日本で一番素敵な食堂がある吉野や瀬戸内海のオリーブ島も捨てがたい.

 

【城郭】

福島県会津若松市 鶴ヶ城

言わずもがなの名城たち.真冬の鶴ヶ城はここでしか見られない絶景です.別名,白鷺城と呼ばれる国宝姫路城も2015年のリニューアルオープン以降行ってない人はもう一度行ってください!熊本城もここ数年で楽しみ方が大きく変わったスポットです.震災の爪痕と,地域の人々の地元愛を感じることができます.

 

【寺社仏閣】

栃木県日光市 日光東照宮

出雲大社は,その背景となる歴史の大きさもさることながら,周辺の観光スポット(海岸線,社,海鮮の店)も充実しておりしっかり楽しめるエリアになっています.日光東照宮は間違いなく国内ド派手神社の最高峰.栃木の山の中なのに徳川幕府の栄華すら垣間見える.伏見稲荷も一見さんへのインパクトは負けてません.深夜の散策には要注意.

 

【史料館】

鹿児島県知覧町 知覧特攻平和会館

特筆すべきは鹿児島知覧.かつて太平洋戦争で「特攻」を志願した若い日本兵たちの遺書を始めとした,貴重な史料が多く残されている施設です.鹿児島県を訪れた際には,最低3時間は確保して,歴史を感じて欲しい場所です.

 

【水族館】

愛知県名古屋市 名古屋港水族館

ぼくシャチが大好きなんです!名古屋港水族館では間近で見れます.超かわいい,おすすめです.家族で行くなら海遊館,あと,定番ですが美ら海水族館で見られる巨大ジンベエザメのたて泳ぎも国内屈指の水族館パフォーマンスです.

 

【博物館】

和歌山県太地町 くじらの博物館

あえてちょっとユニークな博物館を全国から選抜.鉄道博物館は埼玉の大宮の他,京都にもありますが僅差でこちらがランクイン.福井の恐竜博物館の展示は非常にクオリティが高いのに,入場料もリーズナブルで,文字通り老若男女が楽しめるスポットです.太地町で見られる「くじらショー」もお見逃しなく.

 

【通るなら寄りたいSA】

群馬県太田市 太田強戸PA ひもかわうどん

旅の醍醐味サービスエリア.淡路島や伊勢湾岸道刈谷はドライバーなら行ったことない人のほうが少ないくらいであろう名所ですね.皆さんの街のおすすめSAも教えてください...!

【温泉】

福井県あわら市 あわら温泉

絵に描いたような古き良き日本の夏を味わえる洞川温泉は全国におすすめできる温泉地.絶景に関しては「ほったらかし」と「玉手箱」のツートップ入賞です.これは行かないとわからない,行ってください.東根やあわらにあるような,まちなかで足湯が楽しめる温泉街も雰囲気が楽しめて最高です.

【酒・焼酎】

新潟県長岡市 長岡駅 ぽんしゅ館

普段の飲み会は行かないけど,国内宿泊旅行の楽しみの一つは日本酒.新潟のぽんしゅ館みたいな施設はもっと全国にあっていいと思うし奈良にも建てて欲しいですよね.沖縄は(テンションも相まって)古酒クースorionも美味いし最高.鹿児島の3Mからは森伊蔵がランクイン.

【名物】

大分県大分市 2代目与一 りゅうきゅう丼

これは絞るのほんと苦労しました.まじであと10個は挙げたかった.でもやはり「九州の飯はうまい」という噂は本当でした!それぞれの都道府県名物,お店によってこだわりや雰囲気が違ってくるので,そういう違いの楽しみ方も重要です.

【肉・魚】

青森県大間町 大間のマグロ

そして結局しぼれなかったパターン.魚の王様マグロは,国内では那智勝浦,焼津が有名ですが大間のマグロは別格です.写真載せときます.あと特筆すべきは,山梨のぶどうの皮を食って育ったサーモン(と,そのイクラ鹿児島のサツマイモを食って育った黒豚でしょうか.きりがないのでこの辺にしておきます,死ぬまでにぜんぶ一度は食べてみてください(店選びでお金をケチらないことがポイント).

【風景】

和歌山県白浜町

鳥取県鳥取市 鳥取砂丘

熊本県阿蘇市 草千里ヶ浜

開き直って10箇所.全部やばいので写真の解説だけしておきます.

和歌山の白浜は自民党の元幹事長が作った国内屈指のリゾートエリアです.ヨットや海水浴も盛んな一方で,パンダで有名なアドベンチャーワールドというテーマパークもあり,自然を満喫する以外の観光アトラクションも楽しめます.

鳥取砂丘はぶっちゃけ思ってたより狭いです.でも,お楽しみはその広さではなく,日本海に面していることから生まれるその景色の移り変わりだと言えるでしょう.写真は夕方の鳥取砂丘で黄昏る立花巧樹です.

熊本の阿蘇山周辺は,大地の恵みとも呼べる絶景の宝庫です.車でのドライブ周遊をおすすめします.特におすすめは草千里ヶ浜.噴煙の上がる中岳をバックに広がる草原でのんびりと飼い放されてる馬たち.たぶん天国ってこんな景色をしてるんだろうなっていう風景が伺えます.

 

おわりに:日本の発展の鍵は地方都市にあり

全国津々浦々に「まほろば」と呼んでも何ら差し支えのない"まち"が存在している美しい国,日本.

この国がこれから先の時代も,これまでの"まち"の文化を守りつつ発展していくためには,地方創生が不可欠であると考えています.

自然の恵みをそのまま観光に活かしている"まち",これまで人々が紡いできた歴史に支えられている"まち",近年になって新しく街の名物を人々の手で生み出してきた"まち".

これらの強みをうまく活かして,地方都市それぞれが国庫支出金を頼らずとも経済的に自立することが可能な「稼げる"まち"」にしていくことが必要です.

なんのご縁か,僕のバックグラウンドはITということなので,各々の"まち"での強みを生かした取り組みは現地の方々にお任せするとして,AIを中心とする情報技術を活用することで地方創生に貢献できないか日々考えています.

"まち"の特徴問わず応用可能な汎用性,そして都市内のあらゆる資源の分配と循環を最適化する効率性,かつ,効率化によって生まれたスペースに新たな仕組みを構築できる創造性.これらの特性を既存の"まち"に対して実装可能なエコシステムこそが理想的なスマートシティプラットフォーム.

スマートシティときくと,港区竹芝に立っているような仰々しいビルをイメージして地方の風景にそぐわない概念なのではないかと思われたりするかもしれませんが,それは少し間違い.近年の各コンピュータデバイスの小型化モバイルネットワークの大容量高速化クラウドやMECの高性能化etc.を鑑みれば,日本中の"まち"に景観を損ねることなく最先端の情報技術を浸透させることは十分に可能だと考えています.理想的な"まち"づくりにどんな可能性を載せていくのか,そんな半分妄想的な議論をする機会を今後も貪っていきたいと思います.

今回の"達成"において,僕が得たものは2つ.
1つは,上記のような議論と思考を重ねるためのたくさんのヒント.
もう1つは,この国をもっと好きになれたというある種の幸福感.

うーん,満足.しかし今回で国内すべての土を踏んだというわけではないので,今後もこれまで見たことのない"まち"の顔を拝みに繰り出していきたいと思っています.今この文章を読んでいる方,たぶん僕が言ってることを面白いと思ってここまで読んでくださってるんだと思います.ぜひあなたの知っている"まち"の顔を教えてください!色んなお話ができれば嬉しいです.

今日はここまで,
短時間で書きなぐったので乱文ご容赦を.

20年間、ありがとう!

当記事は本当に個人的な,インターネットに載せる必要もない備忘録です.

 

11月が後半に差し掛かったころ,僕が普段乗っていた車が走れなくなりました

学生宿舎から5kmほど離れた路上で立ち往生し,真夜中のレッカー騒ぎへ.

結局,トランスミッションの不具合が原因ということで,廃車手続きをとることになりました.

 

もともとタイミングベルト等,他の部分にもガタが来ているということで3月末には手放す予定だったんですけど,その時が予想外に早く訪れてしまった形になります.

最初は高額な修理費を出してでも年度内は乗り続けたかったんですけど,「トランスミッションを修理したところで他の部分が壊れない保証はない」というエンジニアさんの助言を受けてこの決断をするに至りました.

 

この車は,HONDAの初代ストリームです.

初度登録年月は2001年3月だったので正に20年と8か月,我が家の一員だったことになります.

人によっては「何を鉄の塊に」と思われるかもしれませんが,ぼく個人的には物心ついた時からあちらこちらに連れて行ってくれた大恩人(車)です.

18で免許を取ってからハンドルを握るようになり,20で高専の寮を出てからは両親からお下がりとして譲り受けずっと乗ってきました.

大学院に入学してから20か月間の走行距離は36,000kmを超えるほどです.

並々ならぬ愛着があってとても心苦しい.

 

www.honda.co.jp

 

先日の公道での立ち往生,とんでもないアクシデントかと思いきや,動けなくなってしまうタイミングとしては本当に完璧だったのです.

  • 予定のない1人ドライブ中であったこと.同乗者に不便な思いをさせたり,約束に遅刻するようなことがなかった.昼までは友達と高速道路に乗っていたし,翌日であれば朝から仕事の予定があったので,停止のタイミングが早くても遅くてもダメだった.
  • 真夜中の片側3車線の通りで止まったので,他の通行にほぼ迷惑がかからなかった.あと100m早く止まっていたら道路を塞いでしまっていたと思うとゾッとする.
  • これによって新車に買い替える決断をしたが,ディーラーによると「この注文が1週間遅ければ納車は春以降になる」ところだった(半導体不足,おそるべし).

寿命で車が動けなくなってしまうタイミングとしては,これ以上はないタイミング.

ここまで見計らってくれたように止まられると,いよいよ車が「鉄の塊」には思えなくなってくるじゃないですか.

はあ,悲しい.

 

新車は,このストリームとほぼ同じカラー,そして同じ4桁ナンバーにしました.

ついでにその車種の20周年ということで発売されていた「20周年特別仕様車」なるモデルを奮発して選択.

ストリーム自体は絶版ですが,これまで走ってくれた20年に最大限のリスペクトができたのではないかと自己満足しています.(何を鉄の塊に)

 

僕が学生生活を過ごした奈良県は,車なしでは限られた生活しかできない地域です.

この学生生活において,車を持っていなかったら逃していたであろう機会は数えきれないほどあります.

この車の20年,特に自分のところにいてくれた最後の4年間に,心の底からありがとうを伝えたいと思います.

 

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ちょっと古い写真だけど。

 

大学院生,代表取締役を1か月やってみるの巻

2021年1月20日,学生起業をやってみました.

音速で時間は過ぎて,法人登記から早1か月.

1か月「代表取締役」という肩書を背負ってみての所感を述べます.

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メンバーは左の5名,順に(本厄,前厄,本厄,本厄,本厄)

 

 

僕たちの会社について

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名前は『あいこ』,株式会社 I co.です.

生駒市を中心に奈良県の地方創生を進めていく会社です.地方創生の中でもITの部分での貢献をメインとしており,地域のITリテラシの向上やDXの推進を目指します.

メンバーは僕含め奈良先端科学技術大学院大学の5人.

基本的な役周りとしては,僕が対外的な代表を務め,総括的なマネジメントと事務的な業務,そして「課題を見つけて(仕事をとって)くる」ことを担当します.残る4人には優秀なエンジニアとして,各々の得意を活かして「課題」に対して存分に食らいついてもらっています.

自社HPの方は現在鋭意製作中なのでちょっと待っててください.笑

 

起業について

学生しながらの起業って,めちゃくちゃ勇気がいりますね.

学生じゃない方の起業はもっと覚悟がいて,もっと後がなくて,もっと大変かもしれないんですけど,ちょっとそちらは体験したことがないので今回は触れません.

「学生」という身分でありながら社会に対してきちんと責任を負えるのだろうかとか,仲間たちがあっさり飽きちゃったらどうしようとか,自分はしっかり仕事をとってこれるのだろうかとか,なんかもう後戻りできなくなるんじゃないかとか.夜ふとんの中でいろいろ考えちゃったりしてました.

そんな不安とあと一応ワクワクも抱えながら迎えた設立日.

いざ登記手続きが完了すると,なんてことなかったっていうのが正直な感想です.登記費用だして書類かいて印鑑おしたら割と簡単に株式会社は出来上がるものです.まさか「平社員」になるより「社長」になる方が簡単だったとは...!

しかしもちろん,別に履歴書に社長って書きたくて起業したわけじゃないのでここからの話が問題です.

 

事業の滑り出しについて

事業コンセプトは「今の自分たちにできることをやる」です.

今回の会社は奈良先端大の学生たちが持つ技術力と地域社会の課題を結びつけて価値を生み出すための器として設立されました.その特性柄,大幅な拡大や投資により資金調達を目指しません.「今できることをやる」会社なのでそれ以上無理な縛りを作る気もないし,もしかしたら1年後には役割を終えたということで畳んでいるかもしれません.学生が背伸びせず,等身大でできる課外活動を世の中に対して役立てることができる仕組み,プラットフォームを築いていきたいと考えています.

さて,多くの課題解決を目指して「営業とシステム提案を頑張るぞ!」と意気込んだはいいものの,現実世界は完全に想定外の方向へと進んでいきます.

 

舞い込んでくる案件の数々.

既に社内の開発スケジュールは秋口までいっぱいいっぱい.

学生エンジニアのバイト雇用も複数件ほぼ内定...

 

あれ...?

営業に駆け回るはずが,そんなことただの1度も行うことなく提案資料や契約書類,その他マネジメント業務に忙殺されることに.確かに嬉しい悲鳴ではあるけれど,覚悟していた不安とは異なる心配要素が転がり込んできて,予想外にてんてこまいです.(呑気にこんな記事を書いてる場合ではない説すらある.笑)エンジニアの皆も,自らの技術力を実社会に実装する,という初めての挑戦にぶちあたり,日夜大奮闘してくれています.

 

(という訳で現在「お急ぎ開発案件」については受付が出来なくなっておりますが,「ITについてこんな困りごとがあるよー」「これ自動化したいよー」「こんな技術について知りたいよー」くらいのご相談はお気軽に頂ければと思います.)

 

思ったこと

1.課題って実は探すまでもない

特筆すべきは世の中に眠る課題の数です.いや,「眠る」というよりも集団で闊歩しているという方が適当かもしれません.規模の大小は様々ですが,世の中に困りごとは溢れているんだということを早速肌で体感しています.

僕たちは法人という社会との確かな接点を通じて,数ある課題の中でもITの力を借りればなんとかできそうな部分に対する挑戦権を得ました.この権利をどう行使していくのか,しっかり考えていかなければなりません.今現在は目の前のことで精いっぱいかもしれないけれど,年内には新規事業の打出しも企んでいます.

こんな感じで,実は課題を探すということは難しくなくて,それよりも,目の当たりにしている課題に対して自分にできることや自分の強みをフィットさせる方法を見つけることが一番の難関であるようです.

その方法は今あらゆる形で模索中ですが,少なくともこの1年は全力で試行錯誤を続けていきたいと思います.

 

2.「何をやるか」よりも「誰とやるか」

これ,スタートアップ系の講演なんか聴いてたら皆言いますよね.僕ももう聞き飽きてうんざりしていたんですが,いやしかし,本当にその通りでした.

今回のメンバー4人は,既に現段階で誰か一人でも欠けていたら成り立っていない状況だと言えるほど,個性豊かで頼り甲斐のあるメンバーです.彼らなくして今回の起業はなかったと思います.

個々の能力はもちろん重要だし,そしてどんなチームでもそれらのマネジメントを行う役割も必要です.

事業を推し進めていく力である「大きな矢印」の中に,
個人の活動経験やスキル,得意などの「小さな矢印」をどう迎合させるか.

この迎合ができるかという部分は完全に個人の相性とマネジメントの担い手に委ねられているので,誰の目線で見ても,本当に「誰とやるか」は重要だと感じました.

 

3.学生だからこそ「とりあえず起業してみる」はアリ

自分1人でも誰か友達とでも,チーム内に少しでも人が欲しがるスキルと2-30万円の初期資金があるのならば誰でも起業してみたらいいと思いました.

嫌でも経済や法律について少しは詳しくなるし,履歴書に「起業しました」って書けるし,上手くいけば当然お金儲けもできていいことばかり.

会社ってうまくいかなきゃ借金まみれになるイメージがありますが,要は銀行から借りなければ借金なんかできないし,従業員を雇わなければ人件費もかからないし,作った商品やサービスを欲しい人に売る,ということを繰り返すだけで会社は成り立ちます.誰かが欲しいと思う商品やサービスさえ持っていれば困ることは基本的にないのです.もちろん最初の登録にお金がかかったり税金を払ったり,という出費はありますが,少しでもお客さんを見つけさえすればそんな金額は割とすぐに回収できます.

多くの外部資本を受けてスタートアップとして命がけで取り組んでいらっしゃる起業家さんには怒られるかもしれませんが,社会人であれば生活のために最低限の生活費を稼ぐノルマができてしまいますが,学生であればそれは必ずしも必要ではありません.

最低限求められる部分で言うならば,今の学生生活の隙間時間で,自分たちのスキルを買ってくれる人を探すというだけのこと.そして将来的には学生生活が終わるころに会社を畳む,ということもできるし,就活をせずに自分の会社を大きくしていくという選択肢も選べます.

ひとえに起業といっても,株式会社だけでなく合同会社個人事業主,社会全体への貢献度合が大きいならば一般社団法人,NPO法人の設立といった具合に,様々な選択肢があります.それぞれ経営するのに必要な条件や特徴が変わってくるので,自分の挑戦してみたいことベースにぴったりな「起業の形」を選んでやってみたらいいと思います.「株式会社」の設立ならお手伝いできると思うので興味のある方は声かけてみてくださいね~

 

以上3点がここ1か月で強く感じたことでした.

長々とこれ以上書いてる時間もなさそうなので今日はこれくらいで.

また節目の時期にでも近況報告させていただければと思います!

 

謝辞

社会に出てすらいなかった僕がこれまでに書いたようなことを体験できたのは紛れもなく多くの方のサポートがあったからです.

「起業しようぜ」って背中押して,以降絶え間なく勉強と開発に取り組んでくれている4人のメンバー,

「最初の案件」,起業に際して全体的なサポート,メンバーの厄除けまでご提供くださった安養寺田原本の松島住職,

学生と同じ目線でコミュニケーションをとって適切にご指導してくださるだけでなく,イケすぎてるロゴデザインまでしてくださった奈良先端大の「ユビ研」助教の松田先生,

「法人設立」に携わった経験で外部からサポートしてくれる宮地くんなどなど,身近な方々の助けに本当に感謝しています.

仕事を紹介してくれる方,応援のコメントを残してくれる方,いつもありがとうございます.

こういった全ての方々に,巡り巡って何らかの形で貢献できるよう頑張っていきますので今後ともよろしくお願い申し上げます.

 

政治はわかんないけど国会議員には文句が言いたい

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っていうツイートをしたら,思いのほか

自民党支持者だと思ってた

立憲民主党きらいじゃなかったっけ

みたいな事を言われたので,今日はこんな記事を書きました.

 

僕には支持政党はありません

首長選(市長選,知事選)以外は白紙投票をします.

(面倒な議論を避けるため「した」とは言いませんが,ちゃんと選挙権は行使してます)

 

僕個人は基本的に政策はなんでもいいと思ってます.

消費税は10%でも3%でも払うし,

検事長や私大の学長が首相に忖度しててもしてなくても構いません.

ましてや政府主催の宴会にかかった費用や官房長官のおやつ代なんかまじでどうでもいい.

常に,ケースごとに政策によってより生活が困窮してしまう人たちの意見が尊重されればいいなと思っています.

 

もちろん個人的に

ガソリン税が安くなったら嬉しいなあ,とか

学生のうちに国民年金制度なくならねえかなあ,とか

そう思うことはありますが,

どのみち全ての意見が合致する政治家の公約を見たことがないので,

議員選は白紙で出します.

(絶対そうと決めているわけではないとも言っておきます)

 

それ以上に国会議員には求めることがあります.

本題は3章からなので,飛ばしてもらっても構いません.

 

 

1.中学公民の授業を寝てた人向けの日本の政治制度のおさらい

 

まず日本は立憲国家です.

これは,日本政府による統治が憲法という制限の下で行われることを意味します.

 

この日本国憲法三大原理から成り立つと言われています.

基本的人権の尊重(自由主義),

国民主権民主主義),

平和主義の3つですね.

 

これらの原理の遂行のための仕組みの一つとして,三権分立が運用されています.

行政権立法権司法権という極めて強い国家権力を

それぞれ独立した機関に与えることで,

いずれかの権力が濫用されたりしないよう

お互いに監視できる仕組みです.

 

何が正しいかということは人によって違います

宗教で説かれていることがこの世の全てだと思っている人もいれば,

病人が多くても死者がいない世の中こそ幸せだと思っている人もいれば,

死刑執行数を増やして見せしめることが平和につながると思ってる人もいます.

となると,全ての人が自由であったときにどこかで必ず意見の衝突が起きるわけです.

 

世界中を見れば,

一人の王様が正しいと言ってることが正しい(専制),とか

多くの貴族が正しいと思ってることが正しい(貴族制),とか

宗教の経典が正しいと書いてることが正しい(神権制),とか

様々な決め方がそれぞれの国家に存在します.

 

その中でも日本は議会制民主主義の国なので,

多数決で選ばれた人たちがつくった法律によって

この国では何が正しいかが指し示されます.

発生した意見の衝突に対してどちらの言い分が正しいかを,

法律に照らし合わせて決定するのが裁判です.

 

大袈裟に言えば日本が民主主義を掲げる以上は,

それがどんなに気の狂った意見だったとしても

そう思う人が多いのであれば

それがこの国の正しいことになります.

 

2.最近のTwitterを見てると「自分の意見」が「この国の正義」だと思ってる人が多い

 

一般の国民は,政治に関して

選挙に行く

「(意見がある人は)自分の意見を発信する

ということを積極的に行うべきです.

むしろこれ以外にはありません.

 

2.1.選挙に行く

選挙に行く」ことには重要な意味があります.

当然,どの年代の人がだれに投票したかという正確な情報は存在しませんが

どの年代の人が投票に来たか,という情報は公開されます.

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

 

リンク先のグラフを見て,もし自分が候補者となって当選を狙うとしたら

どのような政策を公約として掲げますか?

投票率で比べなくとも,ただでさえ日本は全体数として高齢社会なので

60歳代の人が食いつくような政策を掲げるのが一番手っ取り早いのは

火を見るより明らかです.

 

極端な話ですが,このように政治家は

年金受給額アップ!

高齢者の医療負担ダウン!

などと高齢者に有利(≒若者に不利)な政策ばかりを掲げるようになってしまいます.

 

ゆえに政治の公平性を維持するために,

僕のように支持政党がなかったとしても「選挙に行く」ことが重要となります.

 

2.2.自分の意見を発信する

自分の意見を発信する」ことによって,

政治家たちは自分たちの当選のために,

より多い意見を公約やマニフェストに掲げることができます.

自分の意見を国政に反映させるためには重要なアクションです.

 

しかしそれはあくまで「自分の意見」でしかない,ということが

今回最も声を大にして言いたいことです.

繰り返すようですが,何が正しいかを決めるのは法であり,裁判所なのです.

 

○○が正しいと思う

と発信することは大事ですが,

法的根拠や判例も示さずに

○○が正しいからお前は間違っている

等と誹謗中傷することはただの基本的人権の侵害です.

 

あなたの意見はただのあなたの意見なので,

その押しつけをやっているといつまでも議論になりません.

裁定は最後には裁判所がやるので,

その主張に懸ける熱量があるのならば

裁判所にも聞いてもらえるような根拠を用意しましょう.

 

ただ,もちろん僕も含め世の中の多くの人が法的根拠や判例を熟知しているわけではないし,誤った情報を与えられることで自分の意見を決めてしまう人もいるので,事実をベースにした議論や指摘は必要となってきます.

 

3.国会議員の仕事

 

さて,この国で最も議論の内容が重要になるのは国会です.

国民の直接的な多数決で決められるのは法案でなく「法案を決める国会議員」なので,

当の国会議員たちの責任は非常に重いことは明白です.

その重責に伴い様々な特権や高給が与えられています.

 

彼らの行うこの議論においては明確に「する」「しない」の答えを出す必要があります

クラス会のように「じゃあ次回~」で許されるような議題はそうそうありません.

答えを出す議論を行うには,主張がより多くの納得を得る必要があります.

 

大前提の「何が正しいかということは人によって違う」ということさえ理解できていれば,

多くの納得を得られるであろう意見が「事実」に基づいた意見,発案であることがわかるはずです.

 

三者調査の結果,○○の職に就く○○%の人がこう答えています

この病気にはこの薬が有効である科学論文が出ています

このケースにおいては過去にこういった判例が出ています

といった意見が必要なのであって,

 

あなたへの忖度に思えてならない!

存在そのものが国難だ!

国民はみんなこう感じているに違いない!

というような発言は全くの不毛,小中学生レベルと評価せざるを得ません.

中学生の国語の「ディベートしてみよう!」の時間の方がマシです.

 

事実のみを基にした議論でさえ様々な解釈や意見があり,

その中でより多くの国民にこたえる議論を行うのが議員の仕事です.

国権の最高機関たる国会に相応しい議論をするべきです.

その議論の域に達していない喧嘩や野次は小学校に戻ってやっていただきたい.

 

国会議員の仕事は,

国民の代わりに議論すること」であって,

お前の意見を押し通すこと」ではないのです.

与党も野党も関係なく,ケースごとに議論を充実させることに徹するべきでしょう.

 

主張が正しいと常に判断される人はいません.

結果的に与党が失敗したケースもあれば

野党の推測がとんだ的外れだったケースもあるでしょう.

議論を充実させ,立場と根拠を明確にすれば

その情勢時々によってより適した政党や政治家が台頭するようになります.

 

その役割と重要性を考えれば,特権も高給も受け取ればいいし,

豪華絢爛で贅沢な暮らしをしてもいい身分だとは思いますが,

役務を果たせない時には給料の返還とか休むとかじゃなくて

さっさと辞職して次の人に代わってほしいとも思います.

いくらでも優秀な人いるので.

 

一般に,代謝をあげてTry&Errorの回数を増やした方が

全体的な質,レベルの向上が期待できます

 

今のように

”不明瞭や紛失が頻発し,政権の資質は疑われるが,

 対抗野党がろくな根拠や対案を持ってこれずに何も変わらなーい.

 何も思いつかないからとりあえず審議拒否して邪魔はしてみるせいで

 即決即断が求められる案件があっても,すみやかな決定ができてなーい.”

といった状況は即刻抜け出すべきです.

 

 

このツイートにおいては,立憲民主党の主張を支持したわけではありません

このツイートの動画に切り取られている部分に関しては,

これまでの主観的で横暴な主張と異なり

論者が議論に足る根拠を基に主張をしていることに対し評価したまでです.

 

その主張が正しいかどうかは,僕ではなく

碩学であらせられる(はずの)国会議員,

あるいは提訴するならば裁判官の方々が議論し,

判断を行えばいいと思います.

 

ついでに言っておくとこれは中学校の社会で習いましたが

検察庁は行政機関なので

検事長の一人がどうなったとしても三権分立の構造には直接影響しません

検察制度の根幹を揺るがす事態だ!

という意見は意見として認められるべきですが

三権分立の崩壊に直結する

という主張は誤りです.

検察が司法権を握っていると勘違いしている方は恥ずかしい思いをすることになるので十分お気を付けください.

 

4.というわけで僕が政治に関して思うこと

 

という根拠から,僕は冒頭で述べた通り,

僕個人は政府の政策がどのようなものでもいいと思っています.

全戸にマスク2枚投函するのでも,

国民全員分の10万円をその世帯主に振り込むのでも,

緊急事態宣言解除を5月末まで延期にするのでも構いません.

 

ただしそれは

その政策が議員,有識者,専門家によって

事実に基づいてなされた議論の結果である

ということが前提です.

 

なので僕は自民党だろうが立憲民主党だろうがチョコレー党だろうが

議員には事実と主観の区別を明確にした実のある議論を求めます.

この部分への理解がない人はそもそも議員には向いていないのです.

 

環境大臣ともあろう国会議員がメディアに対して中身もなく論理的ですらない説明をしたときとか,

野党第一党の副代表が自らの説明責任を果たすことなく他人に説明責任を求めるような説得力皆無の発言をしたときとか,

政党の幹事長が民間の専門家の話を遮って自己主張をしたときとか,

そういう振舞いに対して議員の資質を疑うことになります.

 

代謝を上げるべきと前項で述べましたが,

このグローバル化,国際連携が進む国際社会においては

国としての主張の一貫性はある程度担保されるべきだと考えます.

 

早々に国会の議論レベルを成熟させ,

信頼感のある政権運営が実現されることを期待します.

 

という感じで中学校の社会科公民で習うことを基に

論点の整理を行なってみました.

とはいうものの政治に関しては全くな門外漢なもので,

何か間違いがあった場合には優しくご指摘いただきたいと思います.

 

おしまい.

英語のわからん高専生がMITで登壇した話

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米国マサチューセッツ州ボストンにあるマサチューセッツ工科大学(MIT: Massachusetts Institute of Technology)は,世界大学ランキングにおいて1位の評価を受ける(QS調べ)世界最高の大学の一つだ.世界有数のスタートアップエコシステムの主軸となっている大学で,様々な国籍の人々が日々研究開発やその事業化,スタートアップに全力を注いでいる.

 そんな大学の一講義室で100人ほどのオーディエンスを前にして登壇する機会があった.登壇と言っても,MITのアントレプレナーシップ教育の中心機関であるMARTIN TRUST CENTERで開催されるピッチイベントに参加したという話.

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「Pitch2Match」はMITの学生たちの間で最も人気のあるイベントの一つで,参加者が1枚のスライドと1分間のピッチで持ち込んだビジネスアイデアやプランをアピールする.参加者はほとんどがMITの学生だが,門戸は幅広く開かれており「奈良高専」の名前でも参加することができる.今回の開催では日本の学校からの参加者は「九州大学」のインド人Adiと「奈良高専」の僕の2名だった.

  僕の英語力で言うとリスニングが壊滅的,単語力が壊滅的,もうその辺の中学生に英語力で負けているレベルだったが,そこは高専生.テスト範囲のように決まった英文を丸覚えするのは大の得意.せっかく来たんだしやってみるかということで個人的に申し込みを終え,早速日本のGEIOTやNBKで優勝したネタをコンパクトにまとめてGoogle翻訳に投入.出てきたスクリプトをAdiにチェックしてもらって暗記の作業に入った.

 

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Adiと(写真はハーバード大学

 会場はMITの講義室みたいな部屋で全体のオーディエンスは100人程度だったかな.プレゼンターは30人強でほとんどがMIT生.皆が1分間,多様なビジネスアイデア,多様なスライドデザインを駆使してプレゼンを終えていく.登壇はファーストネームの出席番号順だったので「A」diは早々に自らの鮮やかな発表を終え,「S」の僕は一人で緊張.結果的に,ド忘れを頻発して原稿にない文章ねじこんだりしてグッタグタの英語プレゼンを終えた.笑

 退場の寸前,取りまとめのTrish教授が何やら英語で呼び止めてくれた.友達に訳を聞いてみると「勇気を出したあなたに,日本語でプレゼンする1分間をあげましょう!」とのこと.

 

ええ!?

 

突然会場がヒートアップし,壇上に戻る僕.でも日本語でのトークならそれこそ独壇場.好きな食べ物の話から始めて,今のプレゼンのリテイクを1分弱日本語でお話しさせてもらった.会場のほとんどの人は意味がわかってなかったと思うけど,それでも「CheeseたっぷりのPizza」なんかの単語を聞き取って笑ってくれた人が多かったのは本当に嬉しかった.結局会場は笑いと拍手に包まれ,僕はrockstarになってしまったのだった.

 席に戻る時も多くのMIT生がハイタッチの手を差し伸べてくれたし,本当にいい機会に恵まれた.のちのち聞くと,このイベントで追加の時間をもらったり日本語でプレゼンした人がいた事はこれまでにないらしい.そして実はこの時,この日のrockstarになれた(rockstarという評価を最初にしてくれたのはAdi)ことは,翌日の本番のプレゼンテーションで大きな意味を持つことになる.

 

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MITのTrish教授と

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しっかり奈良高専って書き残してきた

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今日はここまで.とりあえずやってみるもんだ、という大事なことを学べた素敵な思い出を日記的にまとめてみた.またボストンの街について別記事で書こうと思う.

関係者の皆様,本当にありがとうございました.

高専 情報工学科のすゝめ

昨今のAI(人工知能、Artificial Intelligence)技術に対する注目の高まりによって、奈良高専でも情報工学科の入試はここ数年トップクラスの出願数を受け付けている.先月の入試説明会にて3年目の担当となる学科紹介のプレゼンターを務めたが,本記事ではその内容を一部抜粋して,高専進学時における情報工学科を選択する優位性について紹介する.

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奈良高専情報工学科HPより

 

【そもそも情報工学とは】

工学とは人類が長い歴史を通して書き上げてきた分厚い「ものづくり」のマニュアルを読み解く,あるいは書き足していく学問である.石器時代に人類は石を叩くことで,獣を狩るための石槍を作った.エジソン白熱電球の発明で街に明かりを灯したし,ライト兄弟は動力を搭載した飛行機で人類の夢を叶えた.そうやって人類はこれまでに培ってきた物の加工や物質の生成に必要なルールを,工学というマニュアルにまとめてきた.

 

情報とは,人の五感から脳に入力されることでその人にとって何らかの知識や知見となりうるもののことを言う.獣が自らの存在を他に知らしめるため雄叫びをあげたとしたらそれは他にとって情報であるわけだから,当然,石器時代よりはるか昔から「情報」自体は存在していたことになる.

 

最近になってその概念を加工して人々の意思伝達,行動選択の質をより向上させようとする動きが活発化してきた.人類は情報を加工することで,機械に読み込ませ処理させる技術情報工学というラベルを貼って工学マニュアルに追記した.情報という概念がはるか昔から存在していたにも関わらず,情報工学は一般社会にも浸透している分野の中では最も新しい工学なのである(最先端といえるバイオナノテクはR&Dや専門の現場以外に浸透しているとは言い難い).

 

人間から発せられた(アナログ)情報を符号(デジタル)化して機械に読み込ませることで,機械は人間の思考よりも格段に速い速度で多くの情報を処理できる.デジタル情報を処理するこの機械を電子計算機(コンピュータ)と呼ぶ.世界初の電子計算機であるENIACは,第二次世界大戦中にアメリカ陸軍によって開発され,人間の手計算では到底不可能と考えられていたミサイルの弾道を計算した.

 

最近の情報工学の教育現場では専ら,人間の頭の中にあるイメージをデジタル情報として作り出すための技術や知識が中心に取り扱われている.

 

例えば100年前に「ネコのキャラクターが動いているというアニメーション情報」を作り出そうと思ったら紙芝居のようなイラストを何百枚も描く必要があったが,情報工学の浸透によって今や小学生でもパソコン上でブロックをいくつか並べるだけでネコのイラストを思うがままに動かすことができる.

 

このように情報工学は,リアルの世界でものづくりを行う他分野の工学とは少し毛色の異なる分野であることがお分かりいただけただろうか.

 

【世の中で価値の付き方が変わってきた】

さて、そんな特徴を持つ情報工学を学んでおくことが他分野よりも優位なのはどんな点か.この説明には、ここ数十年の社会構造の移り変わりについてある程度理解する必要がある.

 

世界で最も有名な国内企業はトヨタ自動車だろう.戦後,トヨタソニーを筆頭に大手メーカーや財閥系企業がこの国の高度経済成長を牽引してきた.このいわゆる大企業や資本家が経済界に君臨し,その事業を支える形で下請けの中小企業や個人事業主がこの社会構造を支えてきた.こういった世の中で働き手に求められる力は「命令を正しく効率的に遂行する能力」であると多くの人が言う.経営陣の打ち出した方針をより迅速に,従順に対応できることが出世街道をひた走るための鍵だった.このような社会構造を(勝手に)「ピラミッド型社会」と呼ぶ.

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ピラミッド型社会

しかし.

以下は平成元年と平成31年に発表された企業時価総額の世界ランキング比較である(企業の価値は株式の時価と発行株式数の積で決まる).30年前には世界ランキングの上位5社を日本企業が独占していたのにも関わらず,現在にはその見る影もない.なぜこのような変化が起きたのか.

  

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平成31年のランキングを見ていくと,GAFAを筆頭とするIT企業が軒並み上位に名を連ねている(AlphabetはGoogle持ち株会社).ここからわかることは,世の中の価値のウェイトはこの30年の間で車やインフラといった「モノ」からWebアプリケーションによってもたらされるサービスやデータといった形なき「情報」に遷移しているということである.

 

さらに金額の項目も見てみる.

30年前の世界一価値の高い企業の企業価値は1600億ドルであるのに対し,現在のそれはおよそ1兆ドルの価値をつけるまでとなっている.「情報」は「モノ」に比べ,その価値のスケーラビリティが非常に大きい.もちろん,情報には価値がつかないものも多く存在するが,当たりさえすれば一般ユーザーには想像もできない価値を社会に対して創出することができる.

 

このような動向が社会構造の在り方に反映されるようになると,それは「ネットワーク型社会」と呼ぶことができる.かつて事業を起すには莫大な資本が必要であったが,今はイデア1つとノートパソコン1台さえあれば個人でも社会に価値を創出する事業を起すことが可能になった.

 

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ネットワーク型社会


このようなプロジェクトベースでの仕事では,前述の「命令を正しく効率的に遂行する能力」よりも,「人に魅力を与える能力」「情報やシステムを正しく扱う能力」といった能力が求められるようになる.日本の「ピラミッド型社会」の在り方が間違っているというわけではなく,これまでの世の中を作ってきたことは言うまでもないし今後も大きな組織の中では生き続けるだろうが,社会全体の動向としては個々の特性や能力が重視される「ネットワーク型社会」に移り変わってきているのだ.


組織や個人の行動,意思決定を支援するAIやビッグデータ分析の技術は今後さらにネットワーク型社会への意向を後押ししていく存在になることを予想する.平成の世の中では「パソコンが使えないと仕事にならない」とよく言われたが令和の世の中では「AIがわからないと仕事にならない」と言われる時代がやってくる.こういった社会背景で,今後あらゆる分野のビジネスに必要とされるITの基礎を高校1年生の年齢から学べるのが高専情報工学であると言える.

 

【最後に】

社会構造の変遷という観点から,出身の情報工学科の優位性について持論を述べた.が,実際のところ身につくスキルというのは自分次第であって,たとえ情報工学科にいても僕のように「プログラミングわからないンゴ」と言い続け専攻科を卒業する人もいれば,機械工学科でも自学自習でアプリケーションの完成にこぎつけるような人もいる.

しかしやはり大学のゼミに入ってからITリテラシを学び始めましたという学生よりも高校生の段階でプログラミング言語に触れている学生の方が能力の習熟ははやい.近々プログラミング教育の実施が小学校の学習指導要領に追加されることなども踏まえ,社会の動向には常にアンテナを張って進路選択ができるようにしていきたい.

 

という,自分への追い込みでした.

最近,小学生が本当にかわいく思える話

 

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は昔,自分を取り立ててくれた先生たちに憧れて,
子供たちに社会科を教える先生になりたいと思っていた.
社会ってのは単に,今も昔も好きな科目なので.笑

 

まぁ歳をとるにつれて,
あの給料で教育委員会とPTAの板挟みにされるなんて
おれにゃ絶対無理だってなったけど.

 

の専攻科生活のうちで僕は複数のかてきょの他に,中学生の不登校支援CoderDojo高専プログラミング教室自治体のパソコン教室などを通して多くの子供たちと関わった.
実は実家には11学年下,小5の弟もいる.
彼らに気付かされる社会の仕組みは本当にたくさんある.

 

中高生ともなれば学力や教養の指導にウェイトが大きく振られるが,小学生の教育にそれはさほど重要ではない.自分が勉強が必要な未来を選ぶかどうかは後で考えればいいことだ.現に僕の身の回りにも,英語の代名詞変化はわからないけれど個人事業を起こし一国一城の主として家族を養っている大人もいる.

 

が個人的に小学生に学んでほしいことは大きく分けて2つで,
世の中のルールに必ずしも縛り付けられないこと」と
世の中のルールの意味を知ること」である.

 

廊下は走れ走れ.
滑って転んで怪我しちまえ.

ただし絶対に走ってない人とぶつかってはいけない.
壁か柱か走ってるもん同士でぶつかること.

 

授業は寝ていい.
宿題もやらなくていい.

ただし「宿題をやった」と嘘をついてはいけない.
「僕は宿題をやりません」とはっきり言おう.

 

校則を守らせることは重要ではないが,
なぜ多くのルールが世の中に存在するのかは
子供たちに知ってもらっておかねばならない.

 

たちは自由だ.

しかし,君たち全員が自由であるべきで,誰かの自由が他の誰かの自由を侵すようなことはあってはならない.もしそうなってしまいそうな時には,自分の行動を自分の自由を認められる範囲内に留める必要がある.

 

昨今,本当に多くの人が「個性」「自分らしさ」を主張する.

それはもちろん結構な事だが,社会生活においてはその「個性」から生まれた主張やら行動やらが他人のこれまた「個性」と頻繁に衝突する.そこで折り合いをつけるために生まれたのがルールであり決まり事であり約束なのだから,これを無視していい道理はない.世の中のルールや法律はだいたいこのようにしてできてきた.

 

それでもこの道理が気に入らないなら,地位と力を得て,世の中のルールを作り替えてもらうか,満足のいくルールの国に移り住んでもらう他はない.散々世の中のルールの世話になり,生かされておきながら「ルールなど,約束など知りません」という態度は許されない.

 

だ,なんせこれを大学生や社会人ですらわかってない人間が多い世の中で,小学生に理解させるなんてのは無理な話なので,僕たちは彼らにあとあと10数年後にはわかってもらえるように線路を引いていく必要がある.最低限これをやっておかないとその子が大人の手を離れた時に,社会で孤立してしまうかもしれない.ルールからの逸脱が著しく大きかった場合には刑務所,少年院送致にされてしまうかもしれない.

 

ちなみに,刑務所などのそういった施設で収容者1人あたりにかかる税金は年間300万円程度だそうだ.そして,一般の社会人の納税額は消費税なども含めると100万円程度であるとも言われている.単純計算で1人の人間を服役囚に育て上げるか納税者に育て上げるかで,この国にとって年間400万円分の違いが出てくるということだ.まあこれは大袈裟な話ではあるにしても,教育の問題は教育者に関わらず全ての人にとって他人事ではないことがわかってもらえるはずだ.

 

々脱線した.

それでいて小学生なんてのは,より多くの「気持ち」と出会ったもん勝ちだろう.

 

「成功して自信がついた」
「この方法ではダメだった」
「こう言われて悲しい」
「こうしたら怒られた」
「人に好きと言われて嬉しかった」

 

この時代の経験とか,自信や不安が人生に大きく影響する.
しかし,世の中のタイトすぎるルールがこういった子供たちの体験を妨げるケースも大いにある.

 

小学生時代というのはその子の人生においてマジのマジで大事な時期なので,
小学校の教員になりたくて勉強してる人には
勉強以外に大切なことがなんなのか,
きちんと自分の中で整理して,現場にあたって欲しいと思う.

 

僕が教育に関わっている中で,他の教育に関わる大人とも出会う.

子供一人一人を見ている素晴らしい教育者であるような方もいれば,もはや教え子をモノとしてしかみてないゴミクズのような年寄りも少なくない.去年残酷な動画が散々ニュースやワイドショーで流れた兵庫の小学校の事件なんかは論外.あんなのはほんま無期懲役とかでいい.

 

談.最近,本を読んで教育の奥の深さを知らしめられた学びがあった.

いわゆる「境界知能」の人々の存在である.境界知能とは,かつての分類では知的障害と診断されていた知能レベルでありながら,分類の更新によって定義上は知的障害とは呼ばれなくなったレベルの知能のことだ.度合いは無論ケースによるが,教育において「健常者」である彼らに「当たり前」のことが「当たり前」として伝わらない.そんな教育現場の大きな課題として立ちはだかる存在の根深ーい話を仕入れられたのでその話もまた後日.

 

等教育は本当に重要だ.

その子を将来輝かせるか「生きづらい」と打ちひしがらせるか,
決めつけるわけではないがその土台作りはほとんどここにかかっている.

 

この認識によって今自分が関わっている子供たち一人一人が
たくさんの未来のまだ小さな種だと思うと,
本当にかわいく,愛おしく見えてくる.
自分が教職者になることはなくとも,
これからもこの意識を持って教育分野に関わっていきたい.

 

世の中のルールに縛り付けてはいけない.
世の中のルールから目を逸らしてもいけない.
このジレンマの克服が大人が学ぶべき初等教育の真髄だと思う.