生きやすいとか,生きにくいとか.~2019年の振り返り~

まずは2019年の振り返りから.

恒例のポエムコーナーは文末にて.笑

 

今年も「個人的今年の漢字」の記事にしようと思ってたのですが,「生・成」の2択から選ぶことができなかったのでやめました.まァ研究でテストパターン生成し続けた1年だったので2つともでもいいかという感じではありましたが...!

 

各々,今年も本当にありがとうございました.

来年もよろしくお願いいたします.

良いお年を~~~!

 

【個人的2019年】

1月.

安養寺に出会う

このお寺の人生経験豊富な住職から学ぶことはたくさんあり,今も足繁く通っては多くの知識経験を提供していただいている.今夜も除夜の鐘を撞きにいく.

 

2月.

日本の寒さから逃れるためにまるまるひと月オーストラリアに亡命

帰りの航空券以外は何の計画もなしに単身,日本語の通じない国へ転がり込んだ.最初は,小学校からの付き合いで留学4年目の親友を頼ってNSW州シドニーに滞在.そこで一通り移動手段の基礎や飲食店でのオーダーに必要な最低限の英語,カジノでの稼ぎ方を教わって一週間を過ごした.ずっとシドニーにいるのももったいないので彼と別れてタスマニアホバート,ローンセストン,デボンポートを転々とし,最後の一週間はシドニーに並ぶ大都市,VIC州メルボルンで過ごした.これまで2週間以上海外にいるということがなかったということもあり,本当に新鮮で印象的な出来事だった.

 

3月.

奈良県COC+事業のシンポジウムに奈良高専代表として登壇奈良県立大,奈良女子大とのつながりの他,大和郡山の企業の社長ともつながりができて後日ご飯に連れて行っていただいたり地元の弟の進路相談にも乗ってもらったり.壇上でこれまでの就活文化や利権に対してカミついた僕は,その後の懇親会で賛否両論あらゆるフィードバックが得られた.初めてつまらない大人たちがくれる自分への否定が心地よく感じることができたこのイベントは,自らの生きていく方針を決めていく上で重要な分岐点になったと思う.

 

4月.

シンポジウムの一件もあり有頂天,天狗になっていた僕は人生で初めてとも呼べる挫折を経験する.僕はPHAZEから派生したとあるプロジェクトのマネジメントに失敗し,これでもかという好待遇が与えられた環境の中で売上を出す土俵に立つことすらできずに解散を告げられた.終わって気付いてみれば,リーダーの立場でありながらろくにチーム作りもできなかったくせにどこか心の中で「メンバーが自分の思い通りにならないせいで上手くいかないんだ」と他人のせいにしていた自分がいて,激しい自己嫌悪に陥る.自分が恥ずかしくなって,髭も剃らずにしばらくの間は呆然と過ごしていた.

 

5月.

上述の挫折に続き,それを上回る悲劇に出くわす.ここには書けないが,嫌な夢を何度も見た.楽しいことももちろんあったはずなんだけどいまいち記憶にないし携帯に写真もほとんどない.

 

6月.

奈良先端科学技術大学院大学アントレプレナーシップ育成プログラム,GEIOTに参加

前の月までの虚無感を拭いきれないままではあったが,いつまでもベッドの上で寝てるわけにもいかないので一度決まった予定をこなすことに専念した.NAISTの素敵な先輩たちとチームを組むことができ,最年少ながら再びリーダーの役職に就くことに.4月の失敗を繰り返すことのないよう「利他自責」に基づいて全ての判断を行なえるように努めた.

 

7月.

保存されている写真が多かった.#サシメシ を掲げて,新たなつながりを増やしていくことよりもこれまで出会ってきた人を大切にして,ご飯に行ったりビジネスプラン創出のためのヒアリングに赴いたりした.寮の後輩,春先に出会った台湾の留学生,本科時代の非常勤の先生,PHAZEでお世話になった社長などなど多くの人に会いに行った.

GEIOTの最終ピッチでは優勝を果たして,再び自信が持てるようになってきた.

 

8月.

安養寺童子として,お盆の期間中毎日お寺のお墓ひとつひとつに提灯をつるし点火するお手伝い.家が生粋の無宗教でこの歳にして一度もお墓参りにいったことすらなかった僕は,お寺でのお勤めを通して人が「生きる」とか「死ぬ」ことについて初めて真剣に考えることができた.

 

9月.

7年続いた高専生活最後の夏休みはアホほど遊んだ.

夏休みの終わりには,今となっては誰もが知る大企業となった事業の創業者の方と食事させていただく機会があり,多くのことを学んだ.教育と技術と地方創生の繋がりに関連して,はっきりと自分が人生をかけてしていきたいことへの道筋が見えてきた.

 

10月.

(味覚的に)上の世界を知る一か月だった.10月も正直夏休みの延長みたいに過ごしてしまったのでとりあえず食った絶品和牛の写真でも貼っておくか.マーベラス

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11月.

22歳になった.

NBKニュービジネスアワード2019という一般向けビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞することで,GEIOTで仕込んだ種に花を咲かせることができた.ひとまず今年やらなくてはならないことは終えられたかなという感想.これが箔となったか,もらえる名刺も増えたし外部からメッセージや依頼相談を受けることも増えた.

 

12月.

今月はシェアハウス内外で色んな事があったが,自分にとって最大の出来事はNAIST起業部代表の拝命だろう.寮の大先輩が1年前にNAIST内に偉大なコミュニティの礎を築き上げた.そもそもそのお話がきっかけで6月のGEIOTにも参加することができた.そんな起業部を1年余りで任せていただけたことのきちんと重みを受け止めて,先輩たちが始めてくださったことをスケールさせながら先に繋げていきたい.来年の活動がとても楽しみ.

 

【今年最後のポエムのコーナー】

出会ってきた人の中には「世の中が生きにくい」と声に出して言う人がちらほらといた.

そんな人たちと話すと「みんなが君みたいに強くないんだよ」と言う.

僕の嫌いなセリフだ.

まるでその「強い」人たちが何の努力もせずに,ただ生まれと育ちの違いだけで世の中に適応しているかのように聞こえるから.

自分は「弱い」から,今後も世の中に適応していけないんだと,可能性を真っ向から否定しているように聞こえるから.

 

「歩」が成ったら「と」になることを知らない人間が将棋で勝てるわけがない.

世の中のルールを知らずして,世の中を上手に生きていけるはずがない.

僕はこの資本主義の日本で社会人になると決めたわけだから,世の中のルールを身につけられるよう努めてきた.

時間と約束を守るのは当然,ずっとニュースは見てるし,知らなかった歴史や言葉は調べるし,読み方のわからない漢字に出会ったらメモしてる.

とくに高専生の多くは,いわば世の中のルールを学ぶ科目である社会科を敬遠しており,自らが解き放たれていく社会の構造に興味がない.

そのくせして「生きにくい」じゃないんだよ.

 

世の中にはこんなに多くのルールがあって人がいて思惑があって嘘が飛び交っているのだから,丸腰で楽に生きていけるわけないでしょ.

自分がどの世界で生きていきたいのか?

それが必ずしも時間と仕事に追われ続けるような日本のビジネスの世界である必要はもちろんなくて,アーティストの世界かもしれないしアスリートの世界かもしれない.

なんなら日本で生きていく必要すらない.

そうやって自分が生きていく世界を見定めて,その世界に適応するか,変えていくだけの力を持つかどちらかしか生きやすい道なんてない.

 

「みんなが君みたいに強くないんだよ」

冗談じゃない.

こちとらこないだ「お前は目立つんだ」って理由でクソジジーにイビられてんだ.

自分のことが嫌いな人間は大勢いるし,その事実を知ってしまった後に自分を保っていこうと思ったら生きやすく生きるために考えるしかない.

「生きにくい」とか言ってる暇があったら,とりあえずやらないといけないことやろや.

 

自戒の念も込めて.

【祝】タヤーズコーヒー開店!

【追記2】

~~~

2日に渡る高専祭,お疲れさまでした.

打上花火のフィナーレ,素敵でしたね!

さて,タヤーズコーヒーでは全予定販売数を早々に完売,10万円以上の売上を達成いたしました!

本当にありがとうございました!!!

 

今回飲み逃しちゃった人も,僕たちのシェアハウスやtoiでターヤが気まぐれに淹れてくれるコーヒーを味わうことができますので,ぜひお声掛けくださいませ!

タヤーズコーヒーのスタッフ一同より,

ありがとうございました~~~!!!

 

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ターヤもお楽しみでした

(toi)
https://ai-together.hatenablog.com/entry/2019/03/17/112803

http://toi101.com/ (←トップ画像は高専祭実行委員長...?)

~~~

 

【追記1】

~~~

高専祭初日,おかげさまでタヤーズコーヒーの販売は絶好調で,およそ150杯の2日分のノルマをほぼ達成いたしました. 

一杯ずつこだわって抽出するコーヒーの良さがお客さん達とも共有できている証拠です.

どうもありがとうございます!!

 

タヤーズコーヒーでは優秀な専攻科生が作成した,実際の飲食店さながらの順番待ち確認システムを導入しています.

このため,順番待ちの間にも高専祭のどこを回っていてもインターネット上でお呼び出し状況が確認できちゃうんです!

これは最大限に活用して無駄なく高専祭とコーヒーを楽しんでいただく他ないですね.

 

さて,初日の傾向としては先生方や高学年,ご高齢のお客さんによく受け入れていただいたみたいですが,タヤーズコーヒーでは若い人でも楽しめるコーヒーを提供しています.

一杯しか飲んでいない方も,ぜひ特徴あふれる3種類のコーヒーを試してみてくださいね!

2日目もよろしくお願いいたします!

~~~

 

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僕たちのシェアハウスの最大の自慢の一つは,夜の食後に美味しいコーヒーが飲めることでしょう.

この家には奈良高専の誇るコーヒーマスター「ターヤ」が住んでいます.

コーヒー展示会のためだけに東京遠征に行き遠方からもコーヒー豆を集めてきては家で様々な抽出方法を試すターヤ.

彼が出してくれるコーヒーカップの中ではフルーティなコーヒーが多様で味わい深い演出を繰り広げており,一口飲んだ人をやみつきにさせてしまいます

 

 

さて,そんなとっておきのコーヒーがなんと!!!

 

ついにこの土日に奈良高専で開催される第53回高専祭にて,ターヤのコーヒースタンドタヤーズコーヒーで飲めることになりました!

 

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今回の出店のために選抜された,こだわりのコーヒー豆は以下の3種類

ターヤが常に店頭にいてくれるので,あなたの飲んでいるコーヒーの豆知識も好きなだけ聞けちゃいます.

是非あなたのお気に入りのコーヒーを見つけてください.

 

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もしかすると,学園祭の模擬店の割にはお値段が少し高いかもしれません.

でも損はさせません.

実は原価率は50%以上.こだわりのコーヒーの味をそのまま出店するための最低限のお値段なんです!

本格的なコーヒー体験がご提供できることを(ターヤが)お約束します.

今回,なんと大和郡山市の知る人ぞ知るコーヒーの名店「K COFFEE」がタヤーズコーヒーに全面協力

業界のプロたちが認める味をぜひご賞味ください.

 

実は高専祭史上初出店となる「専攻科」の学生たちが今もターヤを中心に準備中です.

ぜひ!この土日は奈良高専タヤーズコーヒーへ!

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たのしいたのしい大学のお話Ⅰ

日本の大学は終わりだ.

...誤解を招く言い方をしたので補足.(かつて技術大国と呼ばれた)日本の(世界に通用する研究機関としての)大学(の発展)は終わりだ.いわゆるFランと呼ばれる大学では4年間遊び呆けて論文も書かずに,微積ができるわけでも漢字が読めるわけでも英語が話せるわけでもない人間が学士という学位を与えられて世の中に排出される.一方の東京大学京都大学ですら,QS社の世界大学ランキング[1]BEST100に名を連ねるものの,更なる飛躍は見込めないという論調の主張が識者たちの間では囁かれている.

 

かと言って「終わりだ」と嘆くだけ嘆いて投げ出すわけにもいかない.夏休みの末にこういった問題について勉強させていただける機会があったので,研究の質に直結する,日本の大学の財政的な現状について自分の意見も交えて説明する.

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【日米におけるトップ大学の財政体質の違い】

10月はじめの消費税増税を機に,国家予算の使い道について関心を持つ人が増えてきた.自分のいるアカデミア周辺ではやはり大学,研究機関に金を回せという主張の人が多いように感じる.ここで地方の経営ギリギリの大学を取り上げても仕方がないので今回は日本の最高学府,東京大学にフォーカスをあてて議論を進める.

 

東京大学の平成30事業年度における年間収益は2344億円[2].これに対しアメリカのトップ大学の一つ,ハーバード大学のそれは52億ドル(=5600億円程度)[3]である.無論教員の数も学生の数も違うので,この数字をそのまま大学の質として比較することはできないが,大学全体で研究に使える費用という点に絞れば,少なくとも1000億円単位で差があることがわかる.さらにその収益の内訳に,日米両国の大学の体質の差がはっきりと出ている.

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収益内訳

Harvardにおける収入の内,2000億ドル,割合にして4割以上を占めるのがEndowmentからの拠出だ.Endowmentは日本語で言うと「寄付基金」にあたる概念らしい.今回僕は初めてEndowmentという概念について学んだのでこれを共有する.

 

Endowmentは外部からの寄付金で成り立つ基金のことである.Harvardは学内に「Harvard Management Company」という,れっきとしたCEOが存在する株式会社を擁しており,この基金の資産運用を担っている.HarvardのEndowmentの規模は現在383億ドル(=4兆円程度)であり,Harvard Management Companyはこの元本でアメリカ国債や大企業株の購入およびベンチャー企業への投資を行なって年間5%(=2000億円程度)の利益を計上している.

 

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Harvard Endowment額の推移[4]

このようにHarvardが寄付基金の資産運用で自らの研究費を自給自足している(それも東京大学1年分の収入近く)一方で,日本の大学はその経営基盤の大部分が国からの補助金によって賄われている.

 

【大学改革って何ぞや】

アメリカのトップ大学の一つである同じくマサチューセッツ州にあるマサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)では,ちょうど1年ほど前に興味深いリリース[5]があった.今年の9月より運用が開始されているThe MIT Stephen A. Schwarzman College of Computingについての記事である.Stephen A. Schwarzmanというのは出資者の名前で,要はコンピューティングに特化したカレッジがMIT内に開設されたというリリースだ.

 

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[5]より一部抜粋

このCollege of Computingの最大の特徴は,単にAIとコンピュータサイエンスの学術研究を行うだけでなく,情報工学以外の分野からもコンピューティングに関する技術,ノウハウを集積し,あらゆる分野,最先端の現場でコンピューティング技術を駆使できる人材を育成することがビジョンとして掲げられていることである.最先端技術は何らかの融合領域であることが常である今,既存の学部の枠組みに捉われずに全学を挙げて,最先端の技術や社会のニーズに対応していくこの動きはまさしく大学改革といえる.

 

一方で,以下は今年6月に日本の文部科学省が公開した国立大学改革方針の概要[6]である.見ての通り,わかりきった夢物語のみがダラダラと書かれており,もはや本文を読む気にもなれない.少なくともこんな出来の資料を恥ずかしげもなくネットにぶら下げてる内は本当の意味での大学改革など実行できるはずもない.(行政の知り合い曰く「霞が関の資料は書き漏れがないことが最優先事項で,見やすさは考慮していない」らしい.アホか

 

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国立大学改革方針[6]

運営が国費によって賄われていることによる大学の発展性のなさがもうわかっていただけたと思う.なんでも組織における決定権を握っているのはその出資者であると決まっている.そして自治体と仕事をしたことのある人はよくご存知だと思うが,基本的に行政の人間は,概要から読み取れるように技術やビジネスについてはからっきしである.つまり現在の日本の大学の舵取り役は,最先端技術に精通した大学教授が何と言おうと,文科省碩学であらせられるお役人に委ねられているのだ.ナム.

 

今回の議論は経済的自立の必要性についてとなったが,実は国費に頼らず各個に経済的自立が求められるというこの結論は地方創生の終着点としても同じことが言える(僕的にはここが一番のミソだと思う).国立高専から国立大学に進学する身であんまり文科省の悪口も叩けないので今日はこれまで.この記事を理解してくれた人が大学に対する考え方を広げることができたなら幸い.次回は財政基盤などというよりももっと学生目線での大学制度について考察したい.以下,参考ページ.

 

[1] QS World University Rankings 2020 | Top Universities - Quacquarelli Symonds

https://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/2020

[2] 平成30年度決算の概要について - 東京大学

https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400122663.pdf

[3] harvard_annual_report_2018_final.pdf - Harvard University

https://finance.harvard.edu/files/fad/files/harvard_annual_report_2018_final.pdf

[4] Harvard Endowmnent $39.2 billion on 10% return | Harvard Magazine

https://www.harvardmagazine.com/2018/09/harvard-endowment-39-2-billion-on-10-percent-return

[5] About | MIT Stephen A. Schwarzman College of Computing | Massachusetts Institute of Technology

http://computing.mit.edu/about/

[6] 国立大学改革方針(概要)- 文部科学省

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/__icsFiles/afieldfile/2019/06/18/1418126_01.pdf

 

18になったら時給1000円以下で働くな

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始めに断っておくがこの文章は,今の自分のバイトに不満ばっかりTwitterで垂れ流している人向けの物であって,自分のバイトが好きで取り組んでいる人には何も言うことはない.額面のことなど二の次で,自分の好きなことを楽しく仕事にできることほど素敵なことはない.

 

そもそも僕は学生(ここでは18歳以上,大学1年相当の学年以上の学生を示す)は賃金を目的とした労働をするべきではないと思っている.この持論を納得してもらうためにまず「学生」という特権について説明する必要がある.

 

多くの学生は自分たちの価値を知らない

この国では何歳であろうと学生であれば「労働」「年金の支払い」といったあらゆる国民の義務が免除される.それは将来的に社会に貢献できる人物の育成のため,学生が学問を修め見聞を広め,自己研鑽することに集中させるため他ならない.

 

義務の免除だけではない.世の中の学割という制度も,そもそもは学生たちの修学活動や文化・芸術に関わる機会を促進するためのものだし,インターンシップという制度は「企業内部にアクセスする」という本来外部の人間には決して認められないはずの行為を学生に許している.

 

(学費無償化や奨学金の議論はさておき,)このように世の中は,学生が社会人に比べて自由な活動が行いやすいようにできている.学生証というフリーパスを振りかざしてあちこちに足を運び見聞を広め,人脈を作る.そうやって学生の特権を活用すればするほど,自分が社会に出た時に,より多くの武器をその手に持つことができる.

 

しかし多くの学生は放課後の時間を特権の行使ではなく,飲食店で酔っぱらいの相手をしたり,スマートフォンゲームで終わりのないレベル上げをしたり,タピオカの写真をInstagramに投げるために加工したりするのに使っている.自分たちの価値に気づくことなく20歳をすぎ,就活を始め,企業に散々選り好みされた上で社会の歯車になっていく.

 

実にもったいない.学生は(無理やり)ポケモンで言うとイーブイだ.一昔前の高度経済成長期にはなかなか職業のバリュエーションは選べず,カントー地方でブースターかサンダース,シャワーズになるしかなかったかもしれない.しかしITの発展が進み国全体で地方創生が叫ばれる今,ジョウト地方シンオウ地方カロス地方ブラッキーやグレイシア,ニンフィアに進化できる可能性が広がってきている.仕事の種類はサラリーマンだけではないし,進化の方法は石を持っていることだけではなくなってきているのだ.

 

まず自分の潜在的な価値を知ってもらうことが重要だ.隣で頑張っている友達を「意識高い奴は違うなぁ」と見ているだけでなく,自分にも可能性があるという当事者意識をもってほしい.僕たちは暑い中スーツを着て就活したりしなくても,生活でちょっと工夫をして何らかの強みを身につければ,いくつもの企業に欲しがってもらえるほどに価値があるのだ.

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自分たちの価値を損ねない働き方をする

もちろん特権の行使にしたって,学生が自分たちの生活の中において,勉強漬けになるのか,映画館や美術館で感性を磨くのか,仲間といたる所に足を運ぶのかといった具合に,何にどれほどのウェイトで割り振るのかということは自由で人それぞれである.家庭環境の違いもあるだろうし,学生生活を営む上でお金が必要でそのためにバイトを始めるというのは当然の理屈である.

 

そこでおすすめできるちょっとの工夫というのが「時給1000円以下では働かないと決めること」だ.僕は今年になってから(研究室関連のお手伝いを除いて)全ての働き口の時給を2000円以上に引き上げた.時給換算すると4000円以上もらっている案件もある.ただ,こうして時給を上げてぼろ儲けしましょう!などと言ってるのではない.1000という数字は一例に過ぎないのだが,このように時給の下限を設定することで2つのメリットが得られる.

 

1.働く時間を減らせる

一般的なバイトの最大のネックは時間がかかること,自明である.時給を上げることでシンプルに必要なお金を稼ぐのにかかる時間を短くすることができる.僕が1年前まで放課後にラーメン屋で夜まで働いて得られた賃金は,今僕が夕飯の買い出しついでに小学生たちにWordの使い方を1時間教えて得られる賃金と同額なのだ.

 

NewsPicks(https://newspicks.com/news/3866391/body/)に興味深い議論が掲載されていた.僕は田原総一朗は嫌いだし,この議論は社会全体を対象としているのであまり学生の内から気にする必要のある内容ではないが,労働生産性というキーワードは今回のテーマに直結している.

 

落合陽一
働けば働くほど、お金が増えると思ってる人たちがいる。労働生産性が低いのに、一日中働いている人が多すぎるんですよ。労働生産性が低いから、休みを増やして最低賃金上げるというのは、めっちゃ賛成。そのくらいの余裕感が必要。 引用: https://newspicks.com/news/3866391/body/

 

学生と社会人では,お金を稼ぐ目的が少々異なってくる場合もあるが,自由に使える時間に対する価値は共通である.学生の特権を行使していくためには,時間がいくらかかってもいいから稼がなきゃいけないという考え方をしてはいけない.

 

2.自分の価値を再確認する

古くからの資本主義の考え方では,「報酬」は1人の人間の単なる時間に対する対価であった.これは,産業革命の起こりと共に資本主義が広がりを見せた18世紀から19世紀にかけて,一般的な労働者階級の働き口が工場であったことに起因すると考えられる.ライン上でマニュアル通りの仕事をすることで賃金を得る.つまり雇う側からすれば,手早くマニュアル通りの仕事ができれば誰でもよかったのである.そこに個人間の賃金差がうまれるわけがない.

 

時は流れて21世紀.インターネット技術の発展によって最近はリモートワークやテレビ会議なんかがどの会社でも用いられるようになり,どこにいてもノートPC1台で仕事ができるようになった.200年前に労働者たちに求められていたような仕事はもはやそのほとんどをAIが代わりにやってのける.そんな世の中で社会が学生たちに求める力というと「言われたことを言われたとおりにする力」ではなく,「自分の得意を活かした課題発見およびその解決力」だ(まぁ業種によって様々だし色んな言い方があるだろうが,少なくとも個性のない働き方が求められるということはないだろう).

 

これからの仕事は「マニュアルが読める誰か」ではなく「○○が得意なあなた」に任されてゆく.となると,その労働に対する対価もこれまで通りの定義ではつじつまが合わない.報酬は「1人の人間の単なる時間」に対して支払われるのではなく「その1人1人の労働者そのものの価値」に対して支払われるべきであり,世の中も少しずつそのように変わってきている.

 

www.nikkei.com

 

今最もその動きが過熱しているのはIT業界だ.上のURLは中国のHUAWEIが新卒のAI人材に対して最大およそ3000万円の年俸を支払うことを発表した記事だ.会社へのこれまでの貢献度だとか何時間働いたかではなく,どれだけの技量を持つ学生を自社で使うか,という実力主義での決定である.実はこの動向に関して言うと日本は世界に比べて遅れをとっていることが知られているが,そう遠くない未来に国内でもデファクトスタンダードとなっていくだろう.

 

当然,学生の価値はこのようにITへの造詣だけで決まるものではない.それは短期留学で習得した英語力かもしれないし,本を読んで得た膨大な知識力かもしれないし,実践によって積み重ねてきたファシリテーションやプレゼンで活かされる力かもしれない.これまで磨いてきた何らかの得意やスキルが,学生いや労働者の見られるべき価値だ.

 

あれ,別の現場では自分がもっと必要とされてることがあるのに,なんでこんな安い時給で下働きしてるんだ…?僕がそう思ったのが1年前.今は2000円という(自己)最低賃金を設定して,その対価に見合ったクオリティの仕事をするようにしている.これがまた自信を生み,能力向上につながり,好循環を作り出していく.(自己)最低賃金を設定することで自分の自由に使える時間の価値を再認識し,それを損ねない働き方をしよう.

 

さいご

改めて断っておくが,行動選択は目的ドリブンで行われるべきなので,安い仕事は一切するなと言ってるのではない.仮に時給の安い仕事でも,社会に出る前に学べることや出会える人は多く存在すると思う.本記事の主張はあくまでもバイトに目的を見出せない人向けのものである.

 

バイトに限らず社会人の働き方にも共通する部分が多いはずだと考えているが,僕には社会人経験はないのでその議論はまだしない.無論僕にも見えていない視点は多くあると思うので,そのような指摘や議論は継続的に募っていきたい.

 

僕は世の中の学生たちが各々の時間をその価値に見合った使い方をすれば,国の仕組みを変えるくらいの力が生まれると思っている.良い環境を与えられないことにただ喚くのではなく,与えられた環境下で適応し振る舞い,ゆくゆくはその環境を変えていく力を身につける訓練を一緒にしていこう.

#サシメシ

「僕がただの高専生じゃなくなってきたのって,PHAZEが発端かなって思ってます」

 

先日,寮時代の1つ上の先輩,シュンヤさんから2年ぶりに連絡があった.いや,会うのが2年ぶりなだけで連絡があったのは初めてかもしれない.Facebook上で発信を続けている僕の活動内容について興味を持ったので,是非会って話したいということだった.いやこんな嬉しい話があるか?

 

シュンヤさんはこれまでの僕の投稿やブログの内容に目を通したうえで,はるばる奈良のシェアハウスにお越しくださった.おかげでお互いの興味関心を刺激する会話がスムーズに生まれ,シュンヤさんの活動のお役に立てられそうな僕の知人を紹介させてもらえたり,非常に有意義な時間を過ごすことができた.

 

最近のFacebookを巡っては何かと信頼性を損なうような話題が尽きないが,Facebookは「名刺代わり」以上の役割を果たしてくれる.投稿し続けている”PHAZE”や”toi”といった「活動内容」のおかげでこの日のような再会も果たすことができた.この役割は非常に大きい.

 

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ところで,僕は周りに言われるほどコミュニケーション能力が高くない.これは謙遜とかではなくて事実だ.1対1,もしくは1対多(プレゼン等)の自分が独立した状況やその場の全員が知った仲であればそんなに困ることはないが,「多の中の1人」としてはほとんど行動が起こせない.例えば,微妙に名前の分からない奴がいる同窓会とか合コンとかめちゃくちゃ苦手だ(行ったことないけど).

 

僕がコミュニケーションで一番大事にしているのは1対1のシーン.特にサシで飯に行けるのがベストだ.話したいことを話せる,第三者に気を遣わなくて済む.これまでは居心地の良さだけでこのサシメシを好んでいたが,最近はこのサシメシの現場で新しい繋がりや発見が得られることが体験的にわかってきた.今後,Twitterの「#サシメシ」を通して,こういった機会を発信,記録していきたい.

 

以上が今年度最後の備忘録.明日から高専最高学年.

toi

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奈良の法華寺にある、誰でも手ぶらで集まれるワカモノ基地です。

高校生やその卒業生が中心となり、これからつくっていく新しい場所です。

 --- toiのInstagramより

 

toi奈良市法華寺町にある,ワカモノの秘密基地です.その名前は敷地が101畳であること(101の字面がtoiに似ている),ワカモノたちの新たな「問い」が生まれる場所であるようにと名付けられました.

 

コシさんしーちゃん,2人のオトナが施設の管理を担ってくれていますが,toiにはホストやゲストといった関係性はありません.10代から今んとこ30代まで,いろんな人が集まって来て,色鮮やかなコミュニティを作り上げていく,そんなシェアスペースになっています.高専専攻科という人脈の限界にいる僕が,その外側に飛び出していくための拠点にさせてもらっている素敵な場所です.

 

登場キャラクターとしては,地方の仕事や暮らしを世の中に発信するライターのお兄さん,NPO法人で人と人をつなげる仕事をしているお姉さん,シュールレアリストにアーティスト.最近はYouTuberに大工さんに農家に落語家に看護師さんにエプロン屋さん,県庁職員さんや市外県外から遊びに来てくれる高校生....成績とかキャリアとか,そんな枠組みに息の詰まりそうな思いをしているワカモノは是非一度遊びに来てください.

 

 

 

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てるりんが展開するオリジナルブランドCtrl Studioで次々と編み出されている立体文字toiから飛び出したクリエイティブな作品の一つです.文字が持つ,象形文字としての意味を強く意識して3Dデザインされており,目で見て手で持って字の成り立ちを学ぶことができるプロダクトになっています.

【立体文字】 https://note.mu/kumajiro/n/n017de2216daa

 

 

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立体文字「左・右・皿・本」

 

 二十一世紀百人一首toi随一のお洒落アーティストしゅんじが手掛ける未完成の映像作品です.過去に体験したことのある音楽や匂いなどのトリガーを引かれた時に,脳裏に呼び起される記憶や懐かしさ,それを言葉で表現しようとする人々のありのままの姿が描かれています.

 

 

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二十一世紀百人一首

 

 

 

toiののんびりとした日常の中には,不定期でお食事会やDIYの日などのイベントがちりばめられています.初めての人はぜひそんなイベントのタイミングで遊びに来てください.今日はワカモノ基地,toiのご紹介でした.以下,それぞれ中の人が違う個性豊かなtoiSNSのご案内.

 

 

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Last Night In Sydney

3週間後の帰りの航空券だけを用意してオーストラリアにやって来た.今度の旅行は完全に遊びでしかも無計画なので,特に高い意識を持ったりすることなくケガすることなく生きて帰ってくればいいやくらいの感覚でいたが,当然のごとくいろいろな体験があった.

 

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中学時代の親友がシドニーの大学に留学,この国に滞在し始めて早三年.英語もすっかりマスターした彼がシドニーでの宿泊先手配をやってくれた.いわゆる”アパートシェア”という居住形態で,僕のいた部屋にはバングラデシュ人と韓国人(とあとよくわからない人)が寝泊まりしていた.僕は英語がまっっったくできなかったが,彼らは新入りの僕によくしてくれた.

 

シドニー超弩級の観光都市だ.シドニーは物価が高いことでよく知られているが,どちらかというとそれよりも観光客からの金のとり方をよく知っているといった方がしっくりくる.飲食の価格設定,交通システム,観光スポットのアピールetc.具体的な真似方は帰国してからじっくり考察するとして,このインバウンド消費をこれでもかというほど露骨に狙いに来ている姿勢は奈良にも見習ってほしい.奈良の地方創生についてはまた来月あたりに言及したい.

 

この一週間はセントラル駅前を活動拠点としてシドニー市内及びそこから北に220km離れたポートスティーブンスなどを散策したが,明日から飛行機でタスマニア州ホバートに拠点を移す予定.玲於奈,本当にありがとう.残りの雑務もよろしく...!

 

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鹿ではない